翻訳者の声translators

翻訳者STさん

  • 翻訳歴:40年
  • 翻訳言語:日⇔英
  • 翻訳分野:産業情報全般
  • トピック:翻訳とは

翻訳の仕事をはじめてから40年近くになりますが、特に翻訳の定義を考えたことはありませんでした。改めて考えてみると、翻訳とは、大げさな表現になりますが、異文化間の橋渡しかと思います。翻訳や通訳は技術的には一つの言語から別の言語への変換作業です。同じ言語を話す人々や国々の文化は類似していますが、異なる言語を話す場合には文化に多くの違いが生じます。こうした文化間の違いを越えて両者を繋ぐ役割を果たすのが翻訳ではないかと思います。文字通りに訳しては意味が通じない文章を簡潔明瞭に他の言語に訳すのが翻訳者の技量でしょうが、日本語特有の主語や目的語のない文章、用語の誤使用、特定の企業や業界内の造語など翻訳者なら何度も悩まされている問題に直面しなければなりません。インターネットが普及したおかげで用語の意味は判明するようになりましたが、言葉の欠落や誤使用は調べることができません。原稿通りに訳しては意味が通じない文章を意味が通じるように他言語に書き替える際に必要なのは翻訳者の経験と想像力だと思います。翻訳の仕事をはじめた頃には想像力が必要だとは考えもしませんでしたが、さまざまな原稿を翻訳して痛感しています。

翻訳者MUさん

  • 翻訳歴:17年
  • 翻訳言語:日⇔英
  • 翻訳分野:ビジネス一般、環境、産業情報全般
  • トピック:翻訳とは

「翻訳というと、言葉や文を正しい用語と文法で別の言語に変換することだと思うかもしれないけれど、大事なことは、元の文章を書いた人の頭の中にあったイメージと同じものを読み手に見せられるかどうかです」。これは、私が20年以上前に翻訳の勉強を始めた頃に、ある人から言われたことです。その人はこう続けました。「そして、翻訳文を通して見せるイメージは、あくまでも書き手のものであって、そこに翻訳者の見解が反映されてはいけない。翻訳者はクリエイターではなく、裏方の職人なんですよ」と。
それから長年にわたり、ビジネス・環境・産業情報などさまざまな分野の翻訳を経験してきましたが、相手に同じイメージを見せるというのはなかなか難しい作業です。その要因のひとつは、「標準的な文章」や「完璧な文章」の原文などないということです。同じような内容であっても、書き手によって言葉の選び方、表現の仕方、文の構成はさまざまです。文のねじれ、省略、曖昧な表現などによって理解しにくい文章もあります。まずは書き手の「イメージ」をじっくりと探り出すことから始めなければ前に進みません。また、特にビジネス文書では、文化や習慣の違いにも注意しておかないと、読み手の持つ印象がずれてしまうこともあります。
機械翻訳の性能はかなり向上しているようですが、こうした「標準的」でも「完璧」でもない多くの文章への対応は、まだまだ機械翻訳より「人」の手による翻訳の方が有効だと思いますし、それこそが人ならではの「職人技」だと思っています。翻訳によって、お客様の技術、情報、方針、意見などを、言語・文化・習慣の壁を越えて、わかりやすい形で伝えられる「職人」であるために、今後も努力を続けていきます。

翻訳者PMさん

  • 翻訳歴:20年以上
  • 翻訳言語:日→英
  • 翻訳分野:産業情報全般
  • トピック:翻訳とは

In the more than 20 years since I first started doing translations, many tools have become available to assist translators and improve translation efficiency, ranging from electronic dictionaries to computer-aided translation (CAT) tools including translation memory software, and the Internet provides a huge treasure trove of reference information. Meanwhile, machine translation utilizing AI has been developing rapidly. For translations between close languages and of documents such as operation manuals for updated or similar products, a high degree of automation is possible, realizing much faster translations and reduced costs.
However, it’s not yet possible to rely on computers to make good translations in every case, particularly when translating between structurally different languages such as Japanese and English. Documents that are grammatically complex, those incorporating many industry and technology-specific words and phrases, and catalogs or other documents requiring copywriting to convey subtle nuances still require a human touch. Human translators are still better able to spot the clues which allow correct judging of contexts, identification of slang, and picking up on nuances and cultural differences which are likely to be overlooked by or mislead machine translation. Although manual translation will cost more and require longer, the resulting documents will have higher precision and will read more naturally than those translated by a machine.
Each translation is different, requiring a slightly different approach. By keeping up with constantly changing technologies and adopting an integrated approach for each translation I aim to maintain high translation quality.

翻訳者JNさん

  • 翻訳歴:9年
  • 翻訳言語:日⇔英
  • 翻訳分野:産業情報全般
  • トピック:翻訳とは

翻訳とは、翻訳対象の【原文】を異なる言語の【訳文】に書き換えることですが、それは大きく2つの作業で成り立ちます。
①【原文】から、書いたヒトが伝えたい情報を正しく理解する。
②その情報が、読むヒトに確実に伝わるような【訳文】を作る。
①において正しい理解をするため、翻訳者は様々な資料を読んで調査を行い、書いたヒトの知識や経験に少しでも近づくように努めます。一方②では、読むヒトの立場や前提知識、文化などを考えて、どのような表現であれば間違いなく理解できるか、補足は必要ないか、時には何パターンも文を作って考えます。
このように、翻訳は書いたヒトと読むヒトの身になって行う作業です。表面的には【コトバからコトバに】変換する仕事ですが、【ヒトからヒトに】伝える仕事だという意識と緊張感が大事だと思っています。

翻訳者HSさん

  • 翻訳歴:30年以上
  • 翻訳言語:日⇔英
  • 翻訳分野:契約書全般、経済他
  • トピック:翻訳とは

産業分野の翻訳者にとって翻訳とは、指定された期限内に100パーセント正確かつ簡潔な訳文を作成することではないでしょうか。日頃、そうした作業でインターネットが大変役立っています。
言葉の定義を確認するための辞書としてインターネットを利用することは勿論ですが、作成した訳文の表現に確信が持てないとき、「完全一致検索」機能を利用して実際の使用例を確認したり、また、原文を理解するうえで必要な知識を補う場面でもインターネットは役立ちます。翻訳作業と極めて相性の良いインターネットは、訳の品質向上とスピードアップに欠かせないツールです。
さて、「当代一流の翻訳者」と言われる人の訳にも誤訳は存在します。訳の誤りを防ぐために大切なのは、複数の人間によるクロスチェックです。出来上がった訳をリングイスツさんに提出し、訳漏れがあれば指摘を受け、修正し、納品を完了します。内部チェック体制が万全なリングイスツさんは、翻訳者の心強い味方です。